大きな台風が迫っている。

連日、ニュースで警鐘が鳴り響く。

海辺には、昨日に続きビッグウェーブが来ていた。

潮風が街を包み込む。

季節の変わり目は、もうここにはいない。

今日のしらべは、FEM「Light」

高校生ぐらいだろうか。カヒミ・カリィに触れたあたりから、ささやくように歌う女の子の声が好きになった。

自室のスピーカーから耳に届く音。

多感な年頃の僕の何かを掻き立てたわけではなく、その囁き声をただただオシャレに感じた。

あれから何十年も経つ。いまだにあのときと同じように心地よい。

好きになる女性は、どっちかというと低い声の人が多い。

*   *   *

雨が降る前に自転車を走らせた。

買い物を終え、店を出ると、白雨が目に映る。

こんな時は、与えられた想定外の時間を楽しむに限る。

雨を避けながら、いつもは行かない店に立ち寄る。

空に青と白が広がった頃、予想外の荷物を抱えた。

想像がつかないことは楽しい。

本当のあしたはまだ想像がつかない。

雨上がりの街は、ほんのり涼しかった。

もう秋だ。